【2023年4月施行】 民法改正!改正点6点を解説!~part3-Ⅰ~
豆知識2023.05.03
~はじめに~
2023年4月に施行される民法改正は、近年、問題となっている所有者不明土地(所有者が不明な土地・所有者が判明していてもその所在が不明な土地)
の問題の解決を目的として、不動産登記法等の改正とともに行われました。
民法では、所有者不明土地の利用・管理を行いやすくするため諸制度(共有制度・財産管理制度など)の見直しが行われ、
所有者不明土地を利用しやすくなるような改正がなされています。
所有者不明土地は、今や国土の20%以上(2017年国土交通省調査)といわれており、不動産取引や不動産管理を行う際に問題となる事例も多くなっています。
また、所有者不明土地の中には長期にわたり放置されているものもあり、相続の際、予期せず問題に直面する可能性もあります。
この機会に、今回の改正で、共有制度、財産管理制度、相続制度や相隣関係がどう変わったか、再確認してはいかがでしょうか。
この記事では、2023年施行の民法改正のポイントを分かりやすく解説していきます。
3.共有制度の見直し
旧民法では相続登記が義務化されていないため、相続等をきっかけとして所有者不明となる土地が、現在多数存在しています。
過去の所有者の相続人を戸籍資料から辿っていけば、所有者不明土地について現在の所有者(共有者)を特定できます。しかし、多くの所有者不明土地は、相続人が多数であったり、
相続人の一部の所在が不明であったりして、所有者(共有者)の特定が困難又は不可能となっている状態です。そのため、所有者不明土地の管理・処分に大きな支障が生じています。
そこで、所在等が不明な共有者がいる場合でも共有地を円滑かつ適正に利用できるようにするため、共有制度の見直しがされることとなりました。今回の改正では、以下の2つが行われました。
Ⅰ.共有物の変更・管理に関する規律の見直し
3-Ⅰ. 共有物の変更・管理に関する規律の見直し
今回行われた共有物の変更・管理に関する規律の見直しは主に以下5点です。
ⅰ.共有物の変更・管理の内容に関する規律の見直し
ⅱ.賛否を明らかにしない共有者がいる場合の管理に関するルールの合理化
ⅲ.所在等不明共有者がいる場合の変更・管理に関するルールの合理化
ⅳ.共有物の管理者制度の創設
ⅴ.共有物を使用する共有者の義務に関する規律の整備
ⅰ.共有物の変更・管理の内容に関する規律の見直し
旧民法では、共有物の変更や管理について、行為の類型毎に以下のような規律としていました。
<旧民法規定>
管理(最広義)の種類 |
根拠条文 |
同意要件 |
変更 |
旧251条 |
共有者全員の同意 |
(狭義の)管理 |
旧252条本文 |
持分の価格の過半数 |
保存 |
旧252条ただし書 |
共有者単独 |
旧民法の規定では、共有物に軽微な変更を加える場合であっても、共有者全員の同意を得なければならないなど、円滑な利用・管理が阻害されていました。
そこで、今回の改正では、共有物に変更を加える行為であっても、形状又は効用の著しい変更を伴わないもの(軽微変更)については、持分の価格の過半数で決定できることが定められました。(民法251条1項、252条1項)
なお、「形状の変更」とは、その外観、構造等を変更することをいい、「効用の変更」とは、その機能や用途を変更することをいいます。
例えば、砂利道のアスファルト舗装や、建物の外壁・屋上防水等の大規模修繕工事は、基本的に共有物の形状又は効用の著しい変更を伴わないものに当たると考えられます。
<改正民法における共有物の変更・管理・保存概念の整理>
管理(最広義)の種類 |
根拠条文 |
同意要件 |
|
変更(軽微以外) |
新251条1項 |
共有者全員 |
|
管理 |
変更(軽微) |
新251条1項・252条1項 |
持分の価格の過半数 |
管理(狭義) |
新252条1項 |
||
保存 |
新252条5項 |
共有者単独 |
ⅱ.賛否を明らかにしない共有者がいる場合の管理に関するルールの合理化
旧民法下では、共有物の管理に関心を持たず、連絡をとっても明確な返答をしない共有者がいる場合には、共有物の管理が困難となる問題がありました。
そこで、今回の改正では、賛否を明らかにしない共有者がいる場合に、裁判所の決定を得て、その共有者以外の共有者の持分の過半数により、管理に関する事項を決定できる制度が創設されました。(民法252条2項2号)
なお、この制度は、変更行為や賛否を明らかにしない共有者が共有持分を失うことになる行為(抵当権の設定等)には、利用できません。
また、賛否を明らかにしない共有者に加えて所在等不明共有者がいるときは、この手続と併せて次に説明する所在等不明共有者がいる場合の制度を利用することで、それ以外の共有者の決定で不動産の管理行為をすることが可能です。
ⅲ.所在等不明共有者がいる場合の変更・管理に関するルールの合理化
旧民法下では、所在等不明共有者(必要な調査を尽くしても氏名等や所在が不明な共有者)がいる場合には、その所在等不明共有者の同意を得ることができないため、
共有物に変更を加えることができず、また、所在等不明共有者以外の共有者の持分が過半数に及ばないケースなどでは、管理についての決定もできませんでした。
そこで、今回の改正により、所在等不明共有者がいる場合には、裁判所の決定を得て
・ 所在等不明共有者以外の共有者全員の同意により、共有物に変更を加えること
・ 所在等不明共有者以外の共有者の持分の過半数により、管理に関する事項を決定すること
ができる制度が創設されました。(民法251条2項、252条2項1号)
なお、この制度は、所在等不明共有者が共有持分を失うことになる行為(抵当権の設定等)には、利用できません。
ⅳ.共有物の管理者制度の創設
旧民法では、共有物の管理者に関する明文規定がなく、選任の要件や権限の内容が明らかではありませんでした。
そこで、今回の改正では、共有物の管理者制度が創設されました。
共有物の管理者の選任・解任は、共有物の管理のルールに従い、共有者の持分の価格の過半数で決定されます。(民法252条1項)共有者以外の者を管理者とすることも可能です。
管理者は、個々の行為について共有者の過半数の同意を得ることなく管理に関する行為(軽微変更を含む)をすることができますが、軽微でない変更を加える場合には、共有者全員の同意を得なければなりません。(民法252条の2第1項)
なお、所在等不明共有者がいる場合には、管理者の申立てにより裁判所の決定を得た上で、所在等不明共有者以外の共有者の同意を得て、変更を加えることができます。(民法252条の2第2項)
また、共有者が共有物の管理に関する事項を決定した場合には、これに従って職務を行わなければなりません。(民法252条の2第3項、4項)
決定に違反して行った管理者の行為は、共有者に対しては効力がありませんが、決定に反することを知らない第三者に対しては無効を対抗できません。(民法252条の2第4項)
ⅴ. 共有物を使用する共有者がいる場合の規律の整備
旧民法では、共有物を使用する共有者がいる場合に、その共有者の同意がなくても、持分の価格の過半数で共有物の管理に関する事項を決定できるかが明確でなく、無断で共有物を使用している共有者がいる場合には、他の共有者が共有物を使用することは事実上困難でした。
そこで、今回の改正では、共有物を使用する共有者がいても、持分の過半数で管理に関する事項を決定できることが明記されました。(民法252条1項後段)
これにより、共有物を使用する共有者がいる場合でも、持分の過半数の同意でそれ以外の共有者に使用させることを決定することも可能となります。
ただし、管理に関する事項の決定が、共有者間の決定に基づいて共有物を使用する共有者に特別の影響を及ぼすべきときは、その共有者の承諾を得なければなりません。(民法252条3項)。
また、旧民法では、共有物を使用する者が他の共有者に対してどのような義務を負うかについての規定はありませんでした。
そこで、今回の改正では、共有物を使用する共有者は、他の共有者に対し、自己の持分を超える使用の対価を支払う義務を負うとする規定が設けられました(ただし、共有者間において無償とするなどの合意があれば、支払う必要はありません)。(民法249条2項)
さらに、改正により、共有者は善良な管理者の注意をもって共有物を使用する義務を負うことも明記されました。(民法249条3項)
この結果、共有物を使用する共有者が自己の責めに帰すべき事由によって共有物を失ったり壊したりした場合、他の共有者に対し、善管注意義務違反等を理由とした損害賠償義務を負います。
長くなってしまいましたm(__)m 続きは後日アップします。
少しでも参考になれば幸いです。
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